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気がつけば・・・

 

ずいぶん久しぶりの更新となってしまいました。

当ブログの熱烈な読者であるヤマオカさんを筆頭に、多くの方からご心配やご叱責の連絡をいただきました(-_-;)

 

こんなブログでも、お気にかけていただきまして、とてもありがたく思っております。

これからも、少しずつではありますが、ブログを更新していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

それでは、本題に入ります。

 

本日は、宇宙法研究部会に出席して参りました。

前回は、私が担当している裁判の予定と重なってしまい欠席しましたので、久しぶりの部会参加となりました。

 

本日の部会では、まず、国際宇宙ステーション(ISS)内で行われた(可能性のある)、刑事犯罪が取り上げられました。この事件は、ある宇宙飛行士が、ISS内から、他人の銀行口座に不正にアクセスをした疑いがもたれているものです。宇宙空間における史上初めての犯罪の可能性があるということで、近時ニュースでも取り上げられていましたので、ご存知の方も多くいらっしゃることと思います。

 

この事件については様々な切り口による考察がなされているところですが、本日は、「準拠法」という切り口から調査報告が行われました。

 

主権を有する世界中の各国は、それぞれの国内で適用される法規を有しており、犯罪が行われた場合には、当然、その法規が適用されて、国内の秩序が維持されることになります。

 

ところが、宇宙空間において犯罪行為が行われた場合、どこかの「国内」で犯罪が行われたわけではありませんので、どこの国の法規を適用すべきなのかといった問題が生じるわけです。

 

そこで、ISS参加国である日本、ロシア、アメリカ合衆国、カナダ、欧州参加国間では国際宇宙基地協力協定を締結し、その22条1項で行為者の国の法律が適用されることとしています。ということで、先に触れました事件では、行為者がアメリカ人でしたので、アメリカ合衆国の法規に従って裁かれることになります。

 

この問題は宇宙空間といってもISS内の出来事であったため、準拠法に関するルールが決まっていましたから、その意味では問題ありませんでした。しかし、今後、このような協定を締結していない当事国が絡む問題が生じた場合、どのように解決していくべきなのかといったことは、別途考えておかなければならない問題です。

 

そして、次に行われた調査報告では、「宇宙空間と宇宙物体」というテーマが取り上げられました。

 

例えば、空中において航空機事故が起こった場合、事故現場が「地上(空域)」なのか「宇宙空間」なのか、また、その事故が航空機同士で生じたのか、航空機と何らかの「宇宙物体」との間で生じたのかなどによって、その事故の解決のために適用される法規が異なってくるといった事情があります。

 

ただ、そもそも「地上(空域)」と「宇宙空間」との境目についてさえ国際法による定義が確立されておりませんし、「宇宙物体」についても明確な定義が存在しない状況とのことですので、この問題は出発点から曖昧な状況が続いていると考えられます。

 

今後は、ますます宇宙開発が進んで行き、宇宙空間や宇宙資源等がビジネスに利用される機会も増えていくことが予測されますから、関係者による利害衝突の可能性は飛躍的に高くなっていくことでしょう。そこで、関係当事者を規律する明確なルールを整備しておくことが必要になりますが、本日の部会で取り上げられた2つのテーマのように、宇宙に関してはまだまだルールの構築が遅れている分野が多く残っておりますから、世界各国が協力して早急にルールを作っていくことが必要だといえます。