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本日も充実した部会でした。

 

本日は、令和3年度第2回の宇宙法研究部会が開催されました。第1回の宇宙法研究部会は4月14日に行われ、部会長やその他の役員の交代等重要な行事が行われたのですが、実は、私は別件の対応でどうしても都合がつかず、前回第1回の部会を欠席してしまいました(汗)。そのため、前回の報告ブログもお休みになっています。

 

…ということで、本日は、私にとって今年度第1回目の部会参加となったわけですが、本日の部会では、まず、“宇宙サイバーセキュリティ”をテーマとした報告が行われました。

 

近時、宇宙航空研究開発機構(JAXA)をはじめとした国内約200の企業や研究機関へのサイバー攻撃が疑われる事件もありましたが、サイバーセキュリティの問題は日々重要性を増しています。

 

宇宙関連システムに対する攻撃という括りでは、衛星等に対するミサイル攻撃等の物理的な攻撃も考えられるところではありますが、近時、頻繁に行われ、かつ、被害の深刻な問題として、やはりサイバー攻撃の問題が挙げられます。例えば、GPSに対するサイバー攻撃がなされ、その機能が喪失されるようなことがありますと、1日あたり10億ドルの影響を受けるという米国の試算などもあるとのことでした。

 

一度サイバー攻撃をされて被害を受けてしまうと、その経済的な損失や機能的な被害は甚大になってしまいますから、サイバーセキュリティの問題は、現代社会においては最優先で対応しなければならない問題であろうと改めて認識した次第です。

 

 

そして、その後に、“宇宙資源に関する法的枠組み”についてのメイン報告がありました。宇宙開発が進んでいきますと、他の星や宇宙空間に存在する物質が取得されるようになり、その取得された物質が、我々人類にとって有益に利用されることが考えられます。このこと自体はとても希望のもてる、素晴らしいことなのですが、他方で、このような宇宙に存在する物質の利用は開発国や開発業者に様々な利益をもたらしますので、宇宙資源の取得を“早い者勝ち”の状態にしておきますと、いずれ紛争の種になってしまうことが懸念されます。

 

この点、宇宙に関する国家間合意には宇宙条約(宇宙の「憲法」ともいわれているそうです。)があるのですが、宇宙条約では、宇宙資源に対する所有権を明確に許容する規定も、反対に禁止する規定もないとのことですので、宇宙資源の所有に関するルールはまだ整備途上といった状況ということになります。

 

他方、宇宙条約の解釈に関しては、宇宙資源に関する権利を認める解釈とこれを否定する解釈とがぶつかり合っている状況のようであり、その解釈も各国の思惑に左右される実態が見え隠れするところです。また、米国を中心とした国際的な枠組みの構築にはロシアや中国の参加が期待できないといった問題もあるようですので、残念ながら、宇宙資源に関する法的枠組みについて、世界各国が従うべき統一したルールを作りあげるには、まだまだ時間がかかりそうです。

 

本日行われました“宇宙資源に関する法的枠組み”の調査報告は、幅広い視野と深い知識からまとめられた、極めて密度の濃い内容でした。本当でしたら、宇宙法や宇宙ビジネスにご興味のある皆さんに直接お聴かせしたい内容でしたが、第一東京弁護士会総合法律研究所の内部報告ということでそれが叶わず残念でなりません。

 

宇宙法研究部会では、今回の報告のような素晴らしい報告や講演等が頻繁に行われておりますが、それを皆さまに直接お見せすることができませんので、せめて私のこのブログで雰囲気だけでもお伝えできればと思っております。今年度も、引き続きブログを作成して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。