ロイヤリティを引き下げることはできるのか?

 

今までに、ロイヤリティが高いと感じたことはありませんか?

 

 

加盟店(フランチャイジー)にとってロイヤリティは、事業の成否に直結する経費の1つです。

 

そのため、ロイヤリティが不当に高額な場合にはフランチャイジーとしての事業が成り立つはずもなく、フランチャイジーとして成功するか否かのカギを握っているのは、ロイヤリティの負担次第といっても過言ではありません。

 

そこで、今回からは、ロイヤリティについて少し触れてみたいと思います。

 

 

まず最初にロイヤリティが高額になってしまう理由を確認しましょう。

 

ロイヤリティが高額になってしまう理由として考えられるのは、①「定額制」の場合にその額が事業の実情から乖離している、②「売上高」に応じてロイヤリティの額を算出している、などといった事情が挙げられます。

 

①の「定額制」については、ある意味“そのまま”ですので、ここでは、②「売上高」に応じてロイヤリティを算出している場合を取り上げてみたいと思います。

 

「売上高」を基準とする意味をご存知の方は読み飛ばしていただいて結構ですが、反対にその意味を理解されていない方は、いい機会ですので、しっかりと確認しておいてください。

 

 

それでは、本題に入りましょう。

 

(理解を容易にするためにあえて大まかな議論をしますが)「売上高」を基準とすることの対極には、何を基準とする方法があると思いますか?

 

そうです。「利益」です。「売上高」から経費を差し引いた「利益」を基準として算出する方法です。

 

 

では、どうして、多くの本部(フランチャイザー)は、「利益」を基準にしてロイヤリティを算出しておらず、「売上高」を基準としてロイヤリティを算出しているのでしょう?

 

それは、「売上高」を基準にしておけば、本部がロイヤリティを取れなくなる事態を事実上防げるからです(加盟店の無資力による回収困難は別の問題です。念のため。)。

 

商いをしている場合、「利益」がゼロ(あるいはマイナス)になることはあっても、「売上高」がゼロになることは考え難いですよね。

 

ですから、仮に「利益」に一定の率を乗じてロイヤリティを算出することにした場合、フランチャイジーが赤字経営ではロイヤリティを取ることができなくなりますが、他方、「売上高」を基準としておけば、フランチャイザーにとって、そのような心配はなくなるというわけです。

 

もちろん、事はそう単純なものではなく、「売上高」を基準とする理由も上記だけとは限らないのですが、少なくとも、フランチャイザーにとって最も重要な理由が上記であることは容易に察しがつくと思います。 

 

そして、なにより理解しておかなければならないことは、「売上高」を基準とした場合、フランチャイジーに利益が出ておらず、苦しい経営状況であったとしても、ロイヤリティの負担だけは襲い掛かってくるということです。 


ロイヤリティを引き下げることはできるのか?(2)

 

前回ロイヤリティの問題を取り上げた時から、しばらく時間が経ってしまいましたが、今回はその続きを書きたいと思います。

 

 

フランチャイジー(加盟店)にとって、「売上高」を基準としたロイヤリティの支払義務を負うということは、「利益」が出ていない経営状況であっても基本的には支払い義務が生じるため、益々苦しい経営に追い込まれる可能性があることを指摘しました。

 

そして、フランチャイザー(本部)が、どうしてフランチャイジーの「利益」ではなく、「売上高」を基準にしてロイヤリティの支払いを求めようとするのかについても触れました(詳しくは、前回ロイヤリティの問題を取り上げたブログをご確認ください。)。

 

 

このような背景事情はともかくとして、これからフランチャイジーになろうとする方々に気をつけていただきたいことは、ロイヤリティの算出方法が明記された契約書に自らサイン(署名)や押印をした場合、原則として、そのロイヤリティの算出方法に拘束されてしまうということです。

 

つまり、契約書にサインした以上、「ロイヤリティを引き下げることはできない」のが原則となりますから、契約書にサインをする前に、ロイヤリティの算出方法を含めたフランチャイズ契約の内容をしっかりと理解しておくことが重要だということです。

 

 

他方、既にフランチャイズ契約を締結し、フランチャイズチェーンに加盟した後で高額(高率)なロイヤリティの現実に気づかされ、苦しんでおられるフランチャイジーの方々も少なくないと思います。

 

しかし、だからといって、売上高を少なく申告して、ロイヤリティの支払いを(一部でも)免れようなどとすることは、決してお勧めできません。  

 

やはり、契約は契約ですから、それを独自の判断で変えてしまうことはリスクが大きいといわざるを得ず、そのようなことがフランチャイザーに知られた場合、未払い分のロイヤリティに高額な利息(通常、商事法定利率の年6分になるでしょう。)を上乗せされて、一括で支払うよう要求される可能性もあるのです。 また、FC契約によっては、損害賠償金や違約金等の金員を上乗せして支払うよう、求められることもあるでしょう。

 

 

それでは、ロイヤリティを引き下げることは絶対にできず、このようなフランチャイジーは全く救われないのでしょうか?

 

実は、先ほど「原則として」ロイヤリティを引き下げることはできないと書きましたが、「例外的に」契約書どおりのロイヤリティを支払わなくても済む可能性が全くないわけではありません。

 

ただし、「例外」はあくまでも「例外」ですから、限定的にしか認められないこともご理解ください(ナンでもカンでも認められてしまったら、それは、もはや原則であって、例外ではありませんね。)。

 

 

では、具体的にどのようなケースでこの「例外」が認められるかということですが、これは、本当にケースバイケースで難しい問題ですから、簡単にご説明できるというものではありません(しかも、仮に裁判になれば、担当裁判官の価値判断次第で、結論が正反対になる可能性も否定できません。)。

 

それでも、あえてお話いたしますと、当該フランチャイズシステムのレベルの低さやフランチャイザーから提供されるサービスの質・量が不十分であること、反面、それに対するロイヤリティが不当に高額であること等の事情を基に、フランチャイザーの債務不履行の問題として議論したり、あるいは、当該ロイヤリティを定めた契約条項が公序良俗に反するものだといった主張をすることで、実質的にロイヤリティを引き下げたのと同様の経済的効果を実現できる可能性があるということです。

 

 

総論的なことを簡潔にまとめただけでもこのように難解な話になってしまいますから、この問題は極めて専門的、技術的なものであることはご理解いただけると思います。

 

そして、各フランチャイジーの具体的な状況を前提に「ロイヤリティを引き下げることができるのか」どうかの見通しを立てることもまた、簡単なことではありません。 

 

そのため、「~のような場合には、ロイヤリティを引き下げられます」などといった形で簡潔に結論を示すことは、残念ながら、ほとんど不可能なわけです。

 

 

つまり、ここで申し上げたいのは、ロイヤリティが高すぎることによって、どうしてもそのままでは経営が成り立たないというフランチャイジーの方は、フランチャイズ契約に関する議論を熟知している弁護士に個別具体的な事情を伝え、それを前提とした相談をするべきだということです

 

法律とフランチャイズの専門家でない方が、少々情報を集めたぐらいでは全く解決できない問題だと思いますし、自ら誤った判断をして傷口を広げてしまうケースも考えられるからです。

 

 

フランチャイズ問題を多く手がけている弁護士であれば、上記のような議論はもとより、本部との交渉方法等も含めてアドバイスを受けられると思います(必ずしも「裁判」を起こすことがふさわしいわけではなく、本部と直接交渉した方が折り合いがつく場合も多いと思います。)。

 

ご自身でフランチャイザーにロイヤリティの減額を申し入れようと考えている方も、理論武装をした弁護士のアドバイスを受けることで、いわば“丸腰”での申入れを避けることができるのです。

 

もちろん、弁護士に代理で交渉を任せるというのも選択肢の一つです。この場合、事実上、本部に対して大きなプレッシャーをかけられるという効果も否定できません。

 

 

結局、この問題は、フランチャイジーが(不合理な)契約書にサインをしてしまった時点で、極めて不利な状況に立たされていることは否定できませんから、生半可な知識で簡単に解決できるはずもなく、早めに専門家に相談すべき問題の一つだということです。 


本部が差額を無断取得しているケース

 

フランチャイザー(本部)がフランチャイズ契約に定めのない支払差額及び仕入割戻金をフランチャイジー(加盟者)に無断で取得したことについて、契約に付随する信義則上の説明義務違反を認めた判決について。

 

 

上記の裁判例は、当事務所で手掛けた事件の判決なのですが、そのようなことに関わりなく、フランチャイジー(加盟者)の方にとっては意義のある判決だと思いますので、このブログで紹介することとしました。

 

平成23年12月16日 東京地裁民事第43部判決

 

判例タイムス1384号 196頁~

に記載があります。是非、ご一読いただくことをお勧めします。

 

 

フランチャイズチェーンにおいては、フランチャイザー(本部)が、フランチャイジー(加盟者)に対し、事前に説明・承諾を得ることのないまま(契約書や法定開示書面等にも記載がないまま)、仕入差額等を取得しているというケースが多いのではないでしょうか。

 

上記裁判例は、そのようなケースの一つについて、「契約に付随する信義則上の説明義務違反」という法律構成により、フランチャイジー(加盟者)の請求を概ね認めたものということになります(仕入差額相当額と仕入割戻相当額の合計額から、本部に支払うロイヤリティ相当額を控除した額の支払いを認めました。)。

 

 

事案の詳細やこの問題に関する私の考え等につきましては、また別の機会に触れたいと思います。  


「契約更新拒絶」(その1)

 

今回は、同僚の宮嶋弁護士と移動中(税理士事務所さんに、税務のオピニオンを聴きに行ってきました。)に話題になった、FC契約の「契約更新拒絶」について触れてみたいと思います。

 

 

FC契約においては、多くの場合、「契約期間」が定められています。この契約期間は業種によって長短があるのですが、5年~15年といった期間にほとんどが入ってしまうのではないでしょうか。

 

ところで、期間の長短はともかく、多くのフランチャイジーは、契約期間が満了した後のことについて、あまり意識をせずにFC契約を締結しています。

 

 

しかし、そこには、大きな落とし穴が潜んでいます。

 

 

FC契約上(加盟勧誘時の担当者やSV等が口頭で説明した内容ではなく、あくまでも「契約書」に記載があるという意味で。)、契約期間が満了した場合にも契約継続が原則とされているのであれば救われるのですが、契約終了が原則とされている場合には、問題が顕在化します。

 

つまり、フンランチャイジーにとって、売上げが順調で、ビジネスの継続を希望する場合であっても、契約期間の満了とともに本部からは契約の更新を拒絶され、ビジネスを終了させられる可能性があるわけです。

 

このような問題があることは、まず明確に意識しておいた方がいいと思います。

 

 

では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか・・・?

 

 

背景事情やフランチャイジーが採るべき行動等については、機会を改めてこのブログでご説明することとします。  


「契約更新拒絶」(その2)

 

今回は、「契約更新拒絶」の続きです。

 

前回のこのブログで、FC契約には、通常、契約期間が定められており、期間の満了によって契約終了が原則とされている場合には、問題が大きいことを指摘しました。

 

つまり、契約期間が満了した時、フランチャイジーが継続を希望したとしても、フランチャイザーが了承しなければ、契約を終了させられてしまう可能性が高いということです。

 

 

これについては、フランチャイジーの経営が順調で、ロイヤリティもしっかり支払っているのに、フランチャイザーがフランチャイジーの希望に反して契約を終了させるはずはない、などとおっしゃる人がいます。

 

このようにおっしゃる人は、契約を継続すれば、本部もロイヤリティー収入等を得られるから、利益にこそなれ、不利益にはならないと考えているのでしょう。

 

 

確かに、そのような側面は否定できませんし、実際、本部によっては、契約の更新を認めるところもあると思いますが、現実は、そのような本部ばかりではありません。

 

一歩踏み込んで考えてみるとわかりますが、フランチャイザーが今までどおりのロイヤリティ収入で満足せず、もっと儲けてやろうと考えている場合、どうでしょうか?

 

フランチャイジーが利益を出してきた場所なのですから、そのフランチャイジーとの契約を終了させて、フランチャイザーが直営店を出店すればどうなるか・・・

 

 

契約を終了させられるフランチャイジーの営業場所は、それまでの実績があるわけですから、フランチャイザーが自ら営業を行えば、ほとんどリスクもなく優良な営業場所を確保できるわけです。

 

また、当該フランチャイジーとの契約を終了させて、フランチャイザーが、他の有力なフランチャイジー(メガフランチャイジーなどと呼ばれる大規模加盟店が多いでしょうか。)にその店舗で営業させる、といったケースもあります(フランチャイザーとメガフランチャイジーが特別な関係にあるとしても、不思議なことではないでしょう。)。

 

 

仮に、ここまで露骨にやらないとしても、(契約更新をした上で)フランチャイザーが当該店舗の近隣にドミナント攻勢をしかけるなどというのは、ある業種ではよく聞く話です。

 

 

前回、今回と、2回にわたって長々と契約期間に関する問題を取り上げました。

 

それは、フランチャイザーとフランチャイジーは、あくまでも別個独立した事業者であるという前提をしっかり理解しておかないと、思わぬ事態に巻き込まれてしまうことがあるということをお伝えしたかったからです。

 

フランチャイジーとしての事業を開始し、軌道に乗り始めた頃に契約更新を拒絶されそうだ、ということでご相談にいらっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。

 

しかし、その時になって慌ててご相談にこられても、何の対策や準備もなされておらず、残念ながら打つ手が無いということも少なくありません。

 

本をただせば、更新が原則とされていない契約を結んでしまったことに問題があるともいえますが、後になってそのようなことを言い出しても始まりません。

 

これからすべきことは、更新が原則とされていない契約であっても、いざとなったら更新を求めて闘えるように対策を練り、準備を整えておくことです(だからといって、必ず契約を更新できるということにはなりませんが、少なくとも、ふいに契約が終了して路頭に迷う、などといったことは避けられるのではないでしょうか。)。

 

そして、そのような準備は、各契約内容や加盟店の状況毎に異なってきますから、普段から専門家に相談するなどして、情報を収集しておくことも重要です。