★競業問題(競業禁止規定・競業避止義務)

 

1 競業(同種事業の営業)が必要となる背景

 

競業禁止(競業避止義務)に関する問題、とりわけ、FC加盟脱退後の競業問題は、フランチャイズトラブルにおいて、最も多く現れる問題の一つだと思います。

 

すなわち、FC加盟店は、少なくない初期投資を行って店舗を構え、あるいは、必要な設備等をそろえてからFC事業を開始するのが通常でしょうから、その事業が上手くいかなかったからといって、簡単に全てを放棄して撤退などできない状況におかれています。

 

他方、FC事業が上手く行かない理由には様々なことが考えられますが、そのうちの一つとして、FC本部へのロイヤリティー等の負担が大きいということが挙げられます。

 

もちろん、ロイヤリティーの負担が大きいとしても、それに見合っただけのノウハウをFC本部が提供し、業績を改善できる見込みがあるのであれば問題ないのでしょうが、ロイヤリティーの支払いが契約上定められているといった形式的な理由だけで、実質的な対価(上記のノウハウ提供等)もなくFC本部がロイヤリティーを取得しているケースは少なくありません。


そのため、FC加盟店としては、このような場合、ほとんど何の意味もなく、ただロイヤリティーの負担を強いられ続けるということになるわけです(なお、多くのFC本部は、ロイヤリティー額の算出にあたり、加盟店の「利益」をもとに計算するのではなく、「売上高」をもとに計算をしますから、「利益」の出ていない店舗であってもロイヤリティーが発生しますので、経営はますます苦しくなります。)。

 

このような状況にあるFC加盟店も、本部に対するロイヤリティーの支払いや本部から要求される割高な仕入れ代金、あるいは、様々な理由をつけては要求される協力金等の負担を回避できさえすれば、なんとか事業を継続していける場合があります。

 

そこで、FC加盟店としては、FCを脱退し、自ら独立して同種事業の営業を行っていきたいという要求が生まれるのです。

 

 


2 競業を行う際に生じる問題点~競業禁止(競業避止義務)条項の存在 ~

 

ところが、FC契約には、多くの場合、「競業禁止(競業避止義務)条項」(名称は異なる場合もあります)が設けられています。

 

この「競業禁止(競業避止義務)条項」というのは、簡単にいえば、FC加盟店に対して、「FCと同種の営業(商売)を行ってはならない」という内容の契約条項です。

 

「競業禁止(競業避止義務)条項」には、「FC加盟店を営業中に他の場所で同種の営業(商売)を行ってはならない」といった内容のものもありますが、より多くのFC契約書に盛り込まれており、実質的に問題となるのは、「FCを脱退した後に同種の営業(商売)を行ってはならない」という条項です。

 

もともとFC加盟希望者は、FCに加盟することで事業を成功させたいと考えているわけですから、FC加盟の当初(契約締結段階)から、FC脱退後のことまでを考えて契約している方は少ないでしょう。あるいは、そもそも「競業禁止(競業避止義務)条項」という文言自体、よく理解していないままFC契約を締結してしまっているかもしれません。

 

しかし、事業者としてFC契約書にサインしてしまった以上、「競業禁止(競業避止義務)条項」を知らなかったとか、意味がわからないとかいった抗弁は、原則として、通用しません。つまり、このような契約書にサインしてFCに加盟した場合には、原則として、FC脱退後の競業が認められないということになります。

 

 


3 競業が認められる場合

 

そうはいっても、FC加盟店の方々は、全財産を投げ打ち、さらには、借金をして初期投資を行っていることが多いでしょう。いわば、当該初期投資に自分の人生や家族の生活を懸けているケースがほとんどであろうと思います。そこで、当該FC契約に「競業避止(競業禁止)条項」がある場合にも、やむを得ずFCを脱退して競業を行う方々は、少なからず存在します。

 

もちろん、その場合、後述するとおり(4「競業禁止(競業避止義務)条項」に反して競業をした場合)のリスクを負い、FC本部との間で争いが生じる可能性があるわけですが、それでも、黙って撤退するよりはマシということで競業を行っていくわけです。 

 

そして、FC本部との争いにおいて、FC脱退者は、自らの思いを主張して闘うことになりますが、FC脱退者にとっても闘う手段が全くないということではなく、以下に見るような事情がある場合には、競業が認められる可能性もあるといえます。

 

(1)「競業禁止(競業避止義務)条項」が無効とされるケース

 

まず、そもそも「競業禁止(競業避止義務)条項」で禁止される範囲(営業禁止区域、営業禁止期間、禁止される営業内容等)が広きに過ぎるような場合には、FC脱退者の権利を不当に制限することになってしまい、その規定自体に問題があるといえます。そのため、このような場合には、当該「競業禁止(競業避止義務)条項」(の全部または一部)が公序良俗に反し無効になる可能性があります。

 

 

(2)「競業禁止(競業避止義務)条項」違反の主張が信義誠実の原則に反し、権利の濫用とされるケース

 

次に、FC本部が、説明義務等に違反して加盟希望者を自己のFCに引っ張り込んだという場合、あるいは、FC本部としての指導・援助義務を果たさなかったがために、FC加盟店が脱退して競業をしなければならなくなったという場合といった、FC本部の側に落ち度が存在するケースでは、FC本部が「競業禁止(競業避止義務)条項」の存在を理由として競業を差し止め、あるいは、損害賠償を請求することは、信義誠実の原則に反し、権利濫用であるとして認められない可能性もあります。

 

 

 

4 「競業禁止(競業避止義務)条項」に反して競業をした場合

 

では、仮に「競業禁止(競業避止義務)条項」に反して競業を行った場合(上記3のように競業が認められるケースではないのに、事実上、競業を行った場合)には、どのようになるのでしょうか。

 

これは、本来的にはFC本部側の考えに左右されることですから、必ずこうなるといった結論を断定することはできません。極端な話、FC本部が見て見ぬ振りをした場合には、FC脱退者は事実上競業を継続できることになります。


もっとも、そのようなケースはあまり多いことではないと思われますので、以下では、FC本部が採る可能性のある手段のうち、主だったものである「営業差止めの請求」と「損害賠償請求」についてご説明します。

 

(1)「営業差止めの請求」について

 

まず、「営業差止めの請求」は、文字通り、FC脱退者の営業(競業)を止めさせるための手続きといえますが、これには、裁判所の「仮処分手続き」を利用してなされる場合と、通常の「裁判」を利用してなされる場合があります。

 

「競業禁止(競業避止義務)条項」には期間的な限定が定められている場合が多いのですが、例えば、それが1年間という制限の場合、通常の「裁判」で請求しているとその期間(1年間)を過ぎてしまう可能性があります。そうすると、その裁判は「訴えの利益」(その裁判を起こす実質的な理由といった程度の意味です。)を失い却下されてしまう可能性が生じるため、より迅速な手続きである「仮処分手続き」で申し立てられることが考えられます。

 

(2)「損害賠償請求」について

 

次に、「損害賠償請求」については、示談交渉等で行われるケースもありますが、FC本部とFC脱退者との折り合いがつかなければ、「裁判」によって請求されるのが通常でしょう。

 

この場合の請求金額についても、結局のところ、FC本部の考え次第というところがあります。もっとも、FC契約の中に、FC脱退者が違反した場合の損害賠償予定額等が盛り込まれている場合には、その金額を請求される可能性が高いでしょう。但し、この金額が不当に過大であったりする場合には、いかに「予定額」とされていても減額されることもあり得ます。

 

 

 

5 まとめ

 

このように、FC契約に競業禁止(競業避止義務)条項が規定されている場合に競業を行うことは、様々なリスクを伴いますが、他方で、競業を行わなければならない必要性があること実際上否定し得ませんし、また、全ての競業禁止(競業避止義務)違反行為が債務不履行や不法行為になるものではないという実情もあります。

 

ただ、当該競業禁止(競業避止義務)規定違反の行為が結果的に許されるものであったとしても、FC本部の出方次第では事実上争い(裁判等)になることもあるでしょうし、これらの問題はケースバイケースで対応を考える必要がありますので、一般論で解決できることではないと思います。

 

ですから、いずれにしても、やむを得ず競業を行う予定のある方、あるいは、すでに競業を行っている方は、ご自身のおかれている状況において、ご自身の加盟するFC本部がどのような出方をしてくる可能性があるのかを具体的に検討し、現実にFC本部が動きだした場合、柔軟に対応できるよう予め経験豊富な弁護士と相談しておくことをお勧めします。 

 

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弁護士法人ポート 弁護士 吉村 実