弁護士は「代理人」

 

民事事件では、弁護士のことを「代理人」といいます。弁護士のことを「弁護人」と呼ぶ場合もありますが、これは、警察や検察を相手にする刑事事件に限ってのことであり、民事事件では、弁護士のことを「代理人」と呼ぶのです。

 

そして、弁護士との良好な関係を築き、ご自身の権利を守りたいと考えるのであれば、弁護士は「代理人」であるということを、しっかりと認識しておくことが重要です。

 

 

依頼者の中には、弁護士に事件処理を依頼したが最後、「あとは弁護士が勝手になんとかしてくれるだろう」とお考えの方が少なからずいらっしゃいます。ひどい場合になると、弁護士に依頼した後、連絡がとれなくなってしまう方もおられます。

 

 

ですが、放っておいても「弁護士がなんとかしてくれる」という考えは、大きな間違いです。

 

 

事件を処理する(権利を守る)ためには、法的知識と経験が必要になりますから、一般の方は弁護士に依頼をするわけですが、事件を処理する前提として、弁護士は、依頼者ご自身の体験された事実関係を把握することが必要となります。

 

このとき、依頼者が事件処理を弁護士任せにしていると、必要な事実関係の報告が充分になされず、弁護士は、自己の有する法的知識や経験を活用することが困難になりますし、ひいては、依頼者ご自身の権利が充分に守られなくなる可能性が出てきます。

 

弁護士は、あくまでも「代理人」であり、「本人」ではありませんから、事実を体験した依頼者「本人」から、事実関係の報告を受けなければならないのです。

 

 

もちろん、依頼者は、高額な弁護士費用を支払って、事件処理を弁護士に依頼するのですから、依頼者が弁護士を頼るのは当然のことです。

 

ですが、問題は、その頼り方にあることをお忘れにならないで下さい。依頼者は、あくまでも、「本人」として、当該事件を「自分自身で闘い抜くつもりだが、法的な専門分野については、弁護士の知識を借りておこう。」というぐらいの気持ちで事件に取り組んだ方が、いい結果につながるのではないかと思います。

  

これらのことを理解された上で、事件処理を弁護士に依頼し、弁護士とつき合っていくことができれば、担当弁護士の能力を最大限に引き出すことが可能になると思います。

 

 

弁護士 吉村 実 (弁護士法人ポート法律事務所)