弁護士に事件処理を依頼する場合

 

弁護士に事件処理を依頼する場合(もともと相談だけを希望していたけれども、ご自身での対応は難しく、弁護士に依頼せざるを得なくなったような場合も含みます。)は、単に相談だけをご希望なさる場合より、さらに慎重に弁護士を選ぶ必要があります。

 

弁護士に事件処理を依頼するということは、ご自身の財産や、場合によっては人生そのものを任せることになりますし、数十万円~数百万円に及ぶ高額な弁護士費用も負担することが通常であろうかと思います。

 

そうであるにもかかわらず、弁護士に事件を依頼される方の中には、あまり慎重に弁護士を選択されていない方も多いようです。

 

 

おそらく、私を含めた一般的な人(いわゆる“セレブ”と呼ばれているような人ではない人といった意味です。)は、数十万円の買い物をする場合、数週間や数か月も考え、悩み、その結果買い物自体を止めてしまうなどということもあると思います。決して、“衝動買い”のできる金額ではありません。

 

ところが、弁護士に事件処理を依頼しようとしている人の中には、“衝動買い”とは必ずしも同じではありませんが、それに近いような感じで弁護士に依頼している(弁護士を選んでいる)ケースも相当あるように思われます。

 

 

弁護士といっても、どのような法律問題にも詳しいということはなく、得意不得意ということがあります。

 

また、知識、経験、思考力は同じようなレベルであり、法律家としての事案解決能力に差はないとしても、当該弁護士の事件処理方針や対応(例えば、丁寧にわかり易い説明をしてくれるか否か、連絡は十分であるか等。なお、弁護士との契約締結を急かすような場合は論外です。)が自分に合わないといったこともあります。依頼者にとって、担当弁護士との相性がよいかどうかは、極めて重要な問題です。

 

一旦弁護士に事件処理を依頼した後でこのような問題が明らかになると、それは悲劇です。ですから、弁護士選びには慎重を期して欲しいと思います。

 

 

そこで、私は、相談者が弁護士を選ぶにあたっては、複数の弁護士を比較することを強くお勧めしています。例えば、法律相談センターや法テラスの法律相談であっても、一度弁護士と相談をしたからといって、その弁護士の意見や考え方だけを前提に今後の対応を考えるのではなく、複数の相談センターや弁護士等に相談を申し込み、同じ質問を複数の弁護士にぶつけてみるとよいでしょう。

 

例えば、辞書を買おうと思ったとき、同じ語句を異なった複数の辞書で調べてみて、その説明の仕方やレイアウトの違い等を確認し、自分にあっている物を選択すると思います。

 

弁護士選びも基本的にはそれと同じです。同じ問題について、複数の法律相談を申し込み、同じ問題に対する回答を複数の弁護士から得るということです。そうすると、その問題に対するご自身の理解が深まるというメリットがあると同時に、各弁護士の個性や特徴(親身になってくれるか、問題点を理解してくれているか、説明はわかり易いか、費用がどのようになっているか等)もはっきりしてきます。

 

 

私は、このような考えのもと、法律相談を行った後、緊急で受任しなくてはならないケースや再度の来訪が困難なケース等を除いて、相談者に一旦帰宅してゆっくりとご検討いただき、可能であれば他の弁護士にも改めて相談してみるよう勧めています。

 

その上で、やはり私にご依頼いただけるという場合には、いつでもお待ちしておりますとお伝えし、再度いらしていただいたときに、正式に受任することとしています(もちろん、こちらでお受けできる事件であることが前提となります。)。

 

そうすることで、依頼者ご自身も、本当に私の考えや事件処理方針等に納得していただけるため、お互いに信頼関係を築いてから事件処理にあたることが可能となるのです(弁護士と依頼者との信頼関係の構築が、問題(事件)解決にとって極めて重要であることについては、ページを改めて取り上げます。)。 

 

 

なお、複数の法律相談を行う場合、相談料もそれなりに必要ですし、時間や労力も負担しなければなりません。

 

ですが、前述したように、弁護士への依頼は、数十万円ないし数百万円程度の費用がかかるケースもあります。また、なにより、問題となっている権利関係によっては、さらに多くの財産を失う可能性すらあります。

 

そのような状況にあって、最善の措置を採るために、相談料、時間、労力を多少かけたとしても、それは決して高い出費ではないと思います。

ご自身が納得のできない弁護士に、うっかり事件を依頼してしまった場合、その悲劇は敢えてご説明するまでもないでしょう。

 

もっとも、簡単に相談に行かれない地域に住んでいる方もいらっしゃると思いますが、最近は、電話相談のみならず、インターネットでの相談等も実施している弁護士・法律事務所もありますから、場合によっては、そういうシステムを利用して比較してみてもよいと思います。

 

 

弁護士 吉村 実