弁護士の個性

「弁護士」と一口に言っても、それぞれの弁護士ごとに個性があるのは当然です。というより、一般のサービス業に従事されている方々と比べると、弁護士というのは、非常に個性的な人種であるかもしれません。

 

そもそも、自分の人生をかけて、合格できるかどうかもわからない司法試験にチャレンジしてまで弁護士を目指すというのは、一般的な発想とはほど遠いと言えますし、よほど自分の能力に自信があるか、あるいは、組織の中で仕事をしていくことに不安があるかといった事情をもった人間の集まりなわけですから、個性的でないはずがありません。

 

もっとも、このような見方は、私個人の思い込みによるものかもしれませんが、実際、周りの弁護士を見ても、個性の強い人が多いように思います。

 

 

ただ、だからといって、弁護士の資質に欠けるとか、弁護士としての能力に疑問があるということではありません。

 

むしろ、「右へ倣え」の事なかれ主義に染まってしまっては、弁護士業務は全うできません。特に、消費者や個人事業者等、いわば社会的弱者の側に立って、国や大企業といった強大な権力と対峙する立場の弁護士が、長いものに巻かれるがごとく、何の個性も発揮できないようでは、かえって心配になってしまいます。

 

その意味で、個性的であることは、むしろ弁護士にとって有用な資質の一つなのかもしれません。

 

 

では、弁護士に個性的な人が多いということは、依頼者が弁護士とつき合っていく上で、どのような影響があるのでしょうか。

 

依頼者にとっては、ご自身の依頼する(している)弁護士が、唯一かつ最強の助っ人になるケースがほとんどです。それゆえ、担当弁護士の個性がご自身の感性と合わない場合には、依頼者は大変な不安にかられるでしょうし、また、ストレスを抱えることにもつながります。

 

 

例えば、なるべく相手方との軋轢を大きくしたくないと考え、ソフトに交渉して欲しいと考えている依頼者にとって、「俺について来い!」的な性格の弁護士は合わないということです。

 

同じ意味内容の通知(内容証明郵便等)を送付するにしても、そこに記載する言葉として何を選択するか、どういう言い回しを採用するかによって、相手方の受け取り方が変わってくるのは当然ですから、そのような文言の内容についても、依頼者と逐一相談しながら進めるタイプの弁護士がいいということです。

 

 

依頼者と弁護士との相性は、問題解決へのプロセスにおいて、極めて重要になることをお忘れにならないで下さい。

 

特に、どの弁護士に依頼をしても、解決への処理手順に大差のない問題(それほど専門的ではなく、一般的な弁護士なら誰でも対応できる種類の問題)の場合には、弁護士の個性をよく見極め、依頼する弁護士との相性を最優先にして弁護士を選んでもいいのではないかと思います。

 

 

弁護士 吉村 実