事件の見通しについて、「この事件は勝てる」とか、「相手方から回収できる」などと、安易に「甘い見通し」を告げる弁護士には注意した方がよいでしょう。
相談者にとっては、明るい見通しを話してくれる弁護士に好感をもち易いでしょうし、そのような弁護士に依頼したくなるというのが人情だと思います。
また、相談の段階で厳しい見通しや慎重な言い回しをすると、相談者は、その弁護士を「自信のない弁護士」と考える場合もあります。
そのため、弁護士にとっては、最初に厳しいことを言うと仕事の依頼が減ってしまう可能性があり、そのことを意識してか、意識せずかは分かりませんが、最初の段階では厳しいことを告げないという弁護士もいるようです。
ですが、そのような弁護士に依頼したとしても、依頼者にとって、決して利益にならないことは言うまでもないことでしょう。
もっとも、弁護士が回答する「甘い見通し」は、常に間違っているというわけでもありません。本当に見通しのよいご相談内容のときには、「甘い見通し」以外の回答にはならないからです。
それでは、弁護士の話す「甘い見通し」を信じてもよいのかどうかは、いったい、どのようにして判断すればよいのでしょうか?
それは、「弁護士の選び方」のページでもご説明しているように、やはり、複数の弁護士に相談をして、回答を得ることだと思います。
質問の内容を変えずに、複数の弁護士に対して同じように質問してみて下さい。その全て、あるいは、ほとんどの弁護士が、「甘い見通し」を告げるのであれば、おそらくその問題は、法的に大きな問題のないご相談内容なのだと思います。
これに対して、多くの弁護士が厳しい見通しを告げる中、1人だけ「甘い見通し」を告げる(さらには、委任契約の締結を急かす)ような弁護士には注意が必要ということです。
複数の弁護士に相談をしたからといって、100%弁護士選びを間違えないという保証はありませんが、少なくとも、たった一人の弁護士の判断を鵜呑みにして事件の見通しを考え、その弁護士を選択するよりは、弁護士選びを間違える可能性は低くなるといえます。
そして、複数の弁護士を比較することで、それぞれの弁護士が言っている内容の違い、言い方の違い、トーンの違い等が少なからず分かると思いますが、これが、今後の方針決定に役立つこともあるでしょう。
相談した複数の弁護士の中から、ご自身にとって、もっとも信頼できそうな弁護士は誰か、どの弁護士の判断であれば自分の人生や財産を任せてもいいと思えるのか、比較して検討することで、少しは判断が容易になると思います。
弁護士 吉村 実