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宇宙安全保障法制

 

「空自初の弁護士資格を取得した法務官」

 

ん?なんのこっちゃ?と、最初は私も思いました(笑)。
 
ただ、ゆっくり考えてみますと、航空自衛隊所属の自衛官の方で、弁護士登録をされている先生ということでした。
 
そうです。
 
本日の宇宙法研究部会で行われた講演は、航空自衛隊1等空佐 の大沼和広先生によるものでした。
 
大沼先生は、イラク復興支援派遣輸送航空隊に参加された際、現地に判例六法や資料を持参して、任務終了後に司法試験の勉強をされていたとのことでした。私のような常人にはおよそ想像することのできない過酷な環境下で受験勉強をされ、法曹資格を取得された方ということになります。本当に頭の下がる思いです。自衛隊には、このように優秀で、熱意のある隊員の方々が多く所属されているのでしょう。とても心強く感じます。
 
大沼先生は、現在、 航空自衛隊の作戦を統括する、航空支援集団司令部に所属されているとのことですが、今日は我が国を取り巻く宇宙安全保障環境や宇宙安全保障に関連する法制等についてお話をしていただきました。
 
近時は、地域的な紛争といえども、宇宙空間に設置されている人工衛星等が大きな役割を果たしておりますので、宇宙技術開発は、すなわち、安全保障の問題に直結するという側面があります。我々弁護士は、普段は宇宙技術開発をビジネスの側面で捉えて議論することが多いのですが、現実的な問題として、安全保障の側面からも検討を加えておかなければなりません。
 
世界の各国は、自国の優位性を保つため、あるいは、自国の安全を護るため、宇宙空間を利用した武力行使等を念頭に宇宙技術開発を進めているという現実があります。しかし、そのような開発競争が無秩序に行われた場合、全世界、全人類の生存が脅かされてしまう状況が起こり得るでしょう。
 
そういったことを防止するためにも、宇宙空間に関わる武力(行使)のルールを定めておかなければなりませんが、こういったルールは、条約、国際法、国内法といった法制度の問題でもありますので、我々法律家が知見を深めておくべき分野ということになります。
 
本日のご講演の中で、大量破壊兵器については地球周回軌道に乗せることは禁止されているものの、地球を半周するだけなら許容されるといった、宇宙条約4条 の解釈に関する議論が紹介されました。大量破壊兵器が地球の上を回っていることを想像すると、それが1周だろうが、半周だろうが、どちらにしても十分恐ろしい話だと感じたのは私だけではないと思います。
 
そのような中、我々法律家に求められる最大の使命は、法制度の構築等を通じて、宇宙空間の平和的利用に関する仕組み作りに貢献することでしょう。そして、「第一東京弁護士会 総合法律研究所 宇宙法研究部会」という、公益的な組織もまさにそういった仕組みづくりに寄与してこその組織だということができます。
 
宇宙安全保障に関する分野は、まだまだこれから議論を深めていかなければならない分野なのですが、宇宙法研究部会がそういった部分に少しでも寄与することができるよう、今後も部会員の仲間とともに研鑽を深めていきたいと考えております。
 
今日のブログは、最初軽い感じで始まりましたが、最後は少し真面目な感じになってしまいました。
その辺はご愛嬌ということで。また次回のブログでお会いできればと思います。
 
最後になりましたが、大沼先生、本日はありがとうございました。

そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。