<相続で揉めないための予防策>

Q;私には財産といっても、預貯金を合わせてもせいぜい500万円くらいしかありません。そこで質問なのですが、遺言を作る必要がある方というのは、どのくらいの財産をお持ちの方なのですか?【遺言の必要性】
A;いくら以上の財産を持っているから遺言が必要であるとか、不要であるとかいうことにはなりません。

 確かに、相続財産がほとんど0(ゼロ)に近いか、反対にマイナス(借金)しか残らないという方なら、遺言をする必要はないかもしれません。しかし、相続問題でよく目にする金額(相続財産)は、数百万円程度といったケースが多いという印象があります。

 相続問題でご相談に訪れる方が異口同音におっしゃるのは、「この程度(数百万円程度)の財産しかないのに、どうして揉めなきゃならないの?」ということですが、ご質問の方のように、500万円もの預貯金をお持ちであれば、後の争いを未然に防ぐという意味でも、遺言の作成を検討なさることをお勧めします。

 

Q;私は、現在50代でまだまだ働き盛り。健康な毎日を送っておりますから、まだまだ長生きしそうです。もし、今遺言書を作成したとしても、また後になって気が変わるかもしれません。ですから、自分の気持ちが変わらなくなるまで遺言書を作成しない方がいいと思うのですが? 【遺言の必要性】【遺言の変更・撤回】
 A;遺言書は一度作成しても、後に考えが変わればいつでも自由に内容を変更、撤回することができます。ですから、後に考えが変わることを心配されて遺言書を作成しないという必要はないと思います。  

 むしろ、現在のように、健康で思考力も充分でないと、ご自身の資産を正確に整理し、その分配の方法を考えることは困難だと思われます。実際、ご高齢になってからの遺言書の作成は、皆さん苦労されているようです。

 そして、後に残されたご家族のご負担を大きく軽減させることになる遺言書の作成は、なによりもご家族に対する大きな思いやりの表れの一つといえるでしょう。
 
Q;遺言書を作成する場合、どのような方式での作成するのがいいですか?【遺言の方式】
A;遺言書には、「普通方式」の遺言として、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があり、それぞれに一長一短があることは既述のとおりです。

 ただ、やはり、一番無難なものとしては、「公正証書遺言」になるのではないでしょうか。その理由は、せっかく作成した遺言書が法律の要件を欠いて無効になるという心配がないこと、遺言書が相続人の知らないところで埋もれてしまう心配がないこと等です。
 もっとも、この観点から遺言書を考えるのであれば、「自筆証書遺言」を弁護士の指導のもとに作成し、その保管を弁護士に任せるということでも、公正証書遺言と同様な効果は導けます。そして、弁護士は、公証人とは異なり、遺言書の作成時のみに関わるという存在ではなく、遺言書以外にも財産管理やその他諸々の法律問題等についてアドバイザーとしてのお付き合いも可能ですから、トータルなサポートを受けられることが期待できます。

 

弁護士吉村実(弁護士法人ポート法律事務所)