<① 相続人の問題>~相続人は誰?~

Q;相続人(相続権を有する人)はどのようにして決まるのですか?【相続権】
A;民法の規定(887条~890条)に従って決まります。

 

Q;具体的には、誰が相続人になるのですか?【相続権】
A;被相続人(亡くなった人)に子がいる場合は子が、子がいない場合は直系尊属(親など)が、子も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
  配偶者は、これらの人と一緒に共同相続人になります。これらの人が一人もいない場合には、単独で相続人になります。

 

Q;養子は相続人になりますか?【相続権】
A;養子は、「子」と同じ立場ですから、相続人になります。

 

Q;亡くなった時点で、その人(被相続人)の子が胎児であった場合、生まれてきた子は相続人となりますか?【相続権】
A;はい。父親が亡くなってしまった時に母体にいた子も、無事に生まれてきたときには相続人になります。

 

Q;被相続人(亡くなった人)の婚外子も相続人になるのですか?【相続権】
A;法律上の夫婦の間に生まれた子でなくても、「子」であることには違いがないので、相続人になります(ただし、相続分は異なります。)。

 

Q;婚外子がいるなんて全く知らなかったし、今まで付き合いも一切なかったのですが、それでも相続人になるのですか?【相続権】
A;相続人となるかどうかの基準は「子」であるかどうかですから、それまでの事情に関わらず相続人になります。

 

Q;被相続人(亡くなった人)の子が先に亡くなっている場合、被相続人の孫が相続人になりますか?【相続権】【代襲相続】
A;「代襲相続」といって、被相続人の孫が、先に亡くなっている被相続人の子に代わって相続人になります。

 

Q;被相続人(亡くなった人)の子が相続放棄をした場合、さらにその子(被相続人の孫)が相続人になるのですか?【相続権】【代襲相続】
A;相続人である子が相続放棄をした場合、孫は相続人になりません。

 

Q;私は、先日亡くなった内縁関係の夫とは籍を入れないまま20年間過ごしてきたのですが、私も相続人になりますか?【相続権】
A;残念ですが、内縁関係として過ごしてきた場合について、判例は、相続人の規定を内縁関係に準用することを認めていないため、相続人にはなれない(相続権はない)ものとして実務上扱われています。

 

Q;それでは、被相続人(亡くなった人)と内縁関係であった者は、全く何も受け取ることはできないのですか?【特別縁故者】
A;家庭裁判所の決定によって「特別縁故者」であると認められれば、相続財産の分与を受けられます。

 

Q;「特別縁故者」とはどのようなものですか?詳しく教えて下さい。【特別縁故者】
A;民法958条の3に規定されており、相続人がいない場合で、
  (1) 被相続人と生計を同じくしていた者
  (2) 被相続人の療養・看護に努めた者
  (3) その他、被相続人と特別の縁故があった者
は、家庭裁判所に対して、相続財産の全部または一部を分与するよう請求することができ、家庭裁判所の決定で相続財産の全部または一部が分与されます。内縁関係にあった場合には、上記(1)の場合にあたるでしょう。

 

Q:それでは、内縁関係にあれば、どのような場合も「特別縁故者」として、相続財産の分与を受けられるのですか?【特別縁故者】
A:「特別縁故者」が認められるのは、相続人が一人もいない場合です。また、相続人捜索の公告期間が満了した後3か月以内に請求しない場合も相続財産の分与は受けられなくなります。

 

Q;私の夫は、もう10年以上音信不通で、生きているのかどうか分かりません。この場合、妻である私はいつまでも夫の財産を相続することができないのですか? 【相続権】
A;夫の生死が7年以上不明である場合、妻や子は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることができます。そして、家庭裁判所で失踪宣告が出されると、夫は死亡したものとみなされますから、妻や子は夫の財産を相続することができます。

 

Q;民法で相続人になるとされている人は、どのような場合にも必ず相続人になるのですか?【相続権】
A;一定の場合には、相続人にならないことがあります。

 

Q;相続人にならない場合というのは、どのような場合ですか?【相続権】
A;自分の意思で相続人にならない場合として、相続人が「相続放棄」をした場合があります。また、法律上定められた一定の事由によって相続人にならない場合として「欠格事由」がある場合があります。さらに、被相続人の意思により相続人ではなくなる場合として「推定相続人の廃除」の場合があります。

 

Q;「相続放棄」とは何ですか?詳しく教えてください。【相続権】【相続放棄】
A;相続放棄は、被相続人(亡くなった人)の遺産を全て相続しないことにする手続きです。この相続放棄によって、最初から相続人ではなかったことになります。
 相続人になると、被相続人が生前有していた財産を全て受け継ぐことになりますが、その財産には、マイナスの財産(=借金等)も含まれます。そうすると、相続人は、被相続人の残した借金を背負わされることになってしまい不都合なので、相続放棄をすることで、その借金から解放されることができるのです。
 なお、相続放棄は、相続が始まったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に届け出ることによって行います。この3か月を過ぎてしまうと、原則的には相続放棄をすることができなくなりますので注意が必要です。

 

Q;「欠格事由」とは何ですか?詳しく教えてください。【相続権】【欠格事由】
A;欠格事由は、詐欺又は強迫によって、被相続人(亡くなった人)に遺言をさせたり、自分で遺言書を偽造した等の一定の事情のことをいいますが、このような事情のある者は、相続人になることはできません。

 

Q;「推定相続人の廃除」とは何ですか?詳しく教えてください。【相続権】【廃除】
A;推定相続人の廃除とは、推定相続人が、被相続人を虐待した、重大な侮辱を行った、著しい非行を行ったなどの場合に、被相続人の請求によって、家庭裁判所が推定相続人の相続資格を失わせる制度のことです。
 相続廃除の手続きをするとその者の遺留分もなくすことができ、その者に全く相続させないことができます。

 

 

弁護士吉村実(弁護士法人ポート法律事務所)